ホイアンのバスケットボートは残念過ぎる(145)
- K
- 2023年6月26日
- 読了時間: 6分
歴史ある観光地が変な近代化を進めてしまって、
大変残念なことになっているのは、あちこちで見かける事象だ。
例えば、ミャンマーのヤンゴンにあるシュエダゴン・パゴダ。
夜に行けば金色に輝くめちゃくちゃ荘厳な雰囲気をまとい、
見るものを圧倒する。
10数年前に初めて行ったときには、
あまりに感動したので1時間くらいその場に座ってぼーーっと眺めていたものだ。
ただし、残念なことがある。
メインのパゴダの周りにも様々な60余りの仏塔や廟が存在するのだが、
それらにLEDの電飾がつけられて、下品な色のネオンがギラギラと光っているのだ。
例えば御仏の後ろにある後光を表現するのに、LEDを走らせている。
後光の付け根から先端へとLEDが走っては消え走っては消え、しているのを見ると、
もうなんのありがたみもない。
もちろん仏塔の周囲にもブルーやピンクのLEDが走り、
チカチカと近代化極まりない光を放っていて、興ざめだ。
荘厳な歴史ある雰囲気をぶち壊すLED装飾。
これは、東南アジアの各地で起こっている観光地の残念な近代化のひとつだ。
タイトルに話を戻そう。
12年ぶりにベトナムのダナンを訪れた。
当時はまだ漁村の雰囲気が残っていたダナンは、
12年の月日を経て、ゴールドコーストさながらのきれいなビーチリゾートへと変貌していた。
すばらしい。
これに関してはまた改めて書こうと思う。
ダナンへ行ったついでに、ホイアンにも寄ってみた。
こちらはまだ幾分昔の雰囲気を残していたが、それでも12年前の大人しさはなくなり、
人気の観光地の賑わいを見せていた。
で、せっかくホイアンに来たのだから、と、
バンブーバスケットボート(ココナッツボート)に乗ってみた。
これが、おそろしく残念な経験となり、早くおろしてほしいと思うほどに不快だった。
不快だった原因は間違った近代化だ。
間違ったおもてなしだ。
間違った経済活動だ。
おそらく、多くの人は、昔ながらのバスケットボートに乗せてもらい、
地域の人達の生活を垣間見たり、
静かで豊かなココナッツの森を経験したりして、
非日常の体験をしたいを考えているはずで、
自分ももちろんその非日常を期待して乗った。
だから、乗る前に聞かれた、「バスケットボートでコーヒーカップのように回転したいか?」
という質問には即座に「いやだ」と回答。
別にそういうのを求めていないからだ。
だけどまぁ、そういうアトラクション的なことはあってもいいと思うし、
子供は喜ぶだろうし、いいサービスと言えるかもしれない。
そんな程度のことではない、非常に残念なことを経験したのは乗ってしばらく進んだあとだった。
なんか遠くに騒がしい音楽が聞こえるなーとは思っていたが、
ボートが進むに連れ、その不快な音楽がどんどん近づいてくる。
ココナッツに囲まれた細い水路を抜け、
少し拾いスペースに来たときにそれがなにか判明した。
爆音に合わせて、バスケットボートを傾けながらぐるぐる回転させて、
踊り狂う現地の人が4-5名いる。
そしてそれぞれの回り続けるボートの周りへ強制的に船は進み、そこでしばらく待機させられる。
もううるさすぎて耳が痛い。
もちろん音楽もイケてるDJがかけてるわけでは決してなく、
安っぽい電子音で作られた無理やり盛り上げる系のもので、
もはや田舎のショーパブにでもいるかのようだ。
そして案の定、ひとしきり回転したその人達は、チップを求めてくる。
決してこんなところで見たくもない大暴れのショーを見せられ、
聞きたくもないどころかうるさすぎて不快極まりない音楽で雰囲気をぶち壊され、
それに対してチップの請求。
もちろん応じている観光客もいたが、
明らかに不快な顔で断る観光客も。
そりゃそうだろう。
求めている自然の静けさや雄大さとはもはや正反対にある体験だ。
「早くここを離れて欲しい」と伝えてしまったほどに不快だった。
そしてこれだけでは終わらなかった。
踊り狂うバスケットボートエリアの向こうにはさらにうるさいエリアが展開されていたのだ。
なんと、バスケットボートに1メートルを超えるほどの高さの巨大スピーカーが積まれている。
そんなバスケットボートが一定間隔で多数浮いているエリアに向かっていく。
なんと、カラオケだ。
ココナッツの森を抜けた先にあったのは、バスケットボートカラオケ場だった。
当然、先程よりも爆音だ。
なんなら、お客さんが近寄っていないカラオケボートでは、もう、自分で歌っちゃってる船頭。
マイクに大声で叫び、もう歌ではない。
まだベトナムの歴史ある音楽とかなら我慢もできたのかもしれないが、
先程と同様、昭和のストリップバーとかでかかっていそうなほど、下品でやかましいものだった。
自分と時代が違うから知らんけど。
重低音がハイテンポで鳴り響きまくり、そこに大声で叫び続ける船頭。
そして中国人の団体客とインド人の団体客がひと組ずつ、
カラオケボートに群がってノリノリになっていたが、
大半の観光客はシラーーーーーっとした冷めた顔つきで、
怖いものを撮るようにスマートフォンに保存していた。
いったい、いま、我々は、なにをみせられているのか。
もう恐ろしく不快だった。
バスケットボートは2人乗りなので、妻と乗っていたのだが、
すぐとなりの妻と話すのにも耳元で大声じゃないと聞こえない。
これが夜に自ら出向いたクラブだったとしても、
センスのない選曲に爆音に叫び声ということで、すぐに帰っただろうとおもうが、
ここは、ココナッツの森の間をバスケットボートで浮かんで自然を感じるためのエリアがゆえに、
もう耐えられないほどの不愉快さ。
とどまり続けようとする我らがボートの船頭さんに、
「もうとにかく帰りたい」と伝えて、さっさと戻ってもらった。
あふれかえる観光客を相手にお金を稼ごうとするのは当たり前だし、
むしろそれはいいことだ。
でも、観光客は古き良きを経験しに来ているのだから、
そこを活かしてほしい。
バスケットボートの上で爆音でカラオケしたい団体客がいるのかもしれない。
もしかしたらホーチミンから観光に来ている自国民富裕層が、
カラオケしているのかもしれない。
金払いのいい団体客を優先した結果か。いや、そうなのか?
こんなこと経験したい人がいったい全体の何%いるのか?
なんでこうなったんだ?
そんなことをバスケットボートで考えていただけで、景色を楽しむことも忘れていた。
灼熱の中、ただの不快な時間だけが記憶に残ってしまった。
別のバスケットボートに乗っていた我が子2人も、
「なんだったんだろう」というなんとも言えない顔つきでボートを降りてきた。
海外旅行経験豊富で、新興国の観光地にも慣れまくっている、
それなりにがっかり近代化も色々経験している我が家の全員がこの顔つきなのだから、
よくある新興国の観光地がっかり、という程度ではないほどに、
残念な体験だったのだ。
